PROJECT TREEの取り組み

私たちは、天然ゴム事業が抱える、違法伐採による森林減少、地域住民や労働者の権利侵害、といった問題に対し、独自開発のトレーサビリティシステムとステークホルダーとのパートナーシップによって形成されるエコシステムを通じて、これらの問題解決と持続可能な天然ゴムの生産と利用を目指します。

エシカル・ソーシング(倫理的調達)と
持続可能な供給のために

人権、環境に関する図

PROJECT TREEに通じる
SDGs達成目標

産業と技術革命の基盤をつくろう

9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る

パートナーシップで目標を達成しよう

17. 実施手段を強化し、ゴム産業の持続可能な開発のためのグローバル パートナーシップを活性化

エシカル・ソーシング(倫理的調達)による人権擁護

インセンティブを直接サプライヤーに還元するとともに、農耕トレーニングや教育を行うことでサプライヤーの収益増加を目指します。またサステナビリティ活動にインセンティブ資金を適切に使うことで、限られた農地で、今後増えていく天然ゴムの需要に対応するための生産性を向上させます。

貧困をなくそう

1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる

働きがいも経済成長も

8. 包摂的かつ持続可能な経済成長、及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する

環境保護と持続可能な供給の両立

トレーサビリティーシステムで集荷地点を記録し、その場所のリスクを判定する事で、国立公園等の保護林エリアからの天然ゴム供給を特定し、問題解決に取り組みます。保護エリア周辺の農地開拓と違法伐採を止めることで、野生動物の生態保護に寄与します。

つくる責任 使う責任

12. 持続可能な生産消費形態を確保する

気候変動に具体的な対策を

13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる

陸の豊かさも守ろう

15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する

伊藤忠商事は、インドネシア・スマトラ島のパレンバンとジャンビで2つの天然ゴム加工工場を経営するPT Aneka Bumi Pratama(PT ABP)を保有しています。 また2018年に設立されたGlobal Platform for Sustainable Natural Rubber(GPSNR)の創設メンバーです。
PT ABPは、スマトラ島中南部の小規模農家が経営する農園からゴム原料を購入しています。
それぞれが独立したコレクター、ディーラー、エージェントのネットワークがあり、農園、村の集荷場、オークションから原料を買い付け、PT ABPの工場へ納入します。これがインドネシアの天然ゴムの典型的な商流で、複雑に入り組んでおり、透明性は確保されていません。だからこそ、商流の下流にいる会社には持続可能な生産の実現に積極的に寄与することが求められています。
伊藤忠商事は、天然ゴムのサプライチェーンへのCSRポリシーの浸透とGPSNRガイドラインの適用を実現する一つの方法として、天然ゴムの透明性と持続可能性を目指したPROJECT TREEを発足させました。
PROJECT TREEは活動を開始したばかりですが、活動を拡大するにつれて明らかになっていくであろう天然ゴム生産の持続可能性に関する問題に、可能な限り取り組むことが期待されています。

PROJECT TREEの
3つの主要素

  • サステナビリティサステナビリティアイコン
  • インセンティブインセンティブアイコン
  • トレーサビリティトレーサビリティアイコン
サステナビリティサステナビリティアイコン
伊藤忠商事の子会社PT ABPはNGOのProforestの協力の下、天然ゴムの持続可能化へのニーズに対応し、農家の持続可能性と公平性を改善するプログラムを構築、そのプログラムが参加農家に与える影響について評価しています。
そのプログラムは「小規模農家からの責任ある調達」(RSS)の枠組みに基づくものです。
2021年より始まったこのプログラムは、当初、150農家を対象とし、サプライチェーンのリスク調査、リスク分析に基づく教育プログラムの設定、小規模農家の教育活動のためのABPスタッフの教育を行いました。
インセンティブインセンティブアイコン
伊藤忠商事は小規模農家やディーラーへの透明性および持続可能性を高めるプログラムへの参加を促すため、また小規模農家の生活水準向上のために、インセンティブスキームを構築しました。 インセンティブは現金による支給のほか、教育プログラムや高生産性ゴムの木の幼木、肥料、農機具、安全装備などに使われます。
トレーサビリティトレーサビリティアイコン
伊藤忠商事は伊藤忠テクノソリューションズと共同で、ブロックチェーン技術を用いたトレーサビリティアプリを開発しました。それにより、小規模農家から加工工場までの天然ゴム商流を追う事が可能となり、PT ABPのサプライチェーンに、透明性をもたらします。
特定のゴムロットが加工工場に向けて運送される際、コレクターとディーラー間の取引を毎回アプリに記録します。ゴムの集荷地点を記録し、その地点をスマトラ島の保護区域地図と比較し、潜在的なリスクがある地点を特定します。
リスクの低いゴムに関しては、工場への輸送時点から分別され、加工工場で分離保管・分離生産されたうえで、HeveaConnectの天然ゴム取引プラットフォームで取引されます。
トレーサビリティシステムの図

トレーサビリティシステム

現在、小規模農家から天然ゴム加工業者までの上流のサプライ チェーンには、複数の事業者 (地元の原料収集業者と原料運送・販売業者) が関与しており、サプライチェーンをより適切に管理するために、透明性を高める必要があります。ブロックチェーン技術を利用した私たちのトレーサビリティシステムをスマートフォンアプリで利用することで、日付、時刻、位置情報、数量などの取引情報を相互認証によって記録することができます。

PROJECT TREEは、サプライチェーンの上流からの参加を促進するため、正確な取引記録に対して金銭的なインセンティブを提供する仕組みです。取引を記録した上流のサプライチェーン参加者へのインセンティブは、PROJECT TREE協賛タイヤの売上の一部が使用されます。伊藤忠商事が管理するこれらの資金は、他に、RSS プログラム(小規模農家からの責任ある調達プログラム)の一環として、適正な農業技術普及を促進するための教育など、天然ゴム産業の持続可能性を改善するために活用されます。

トレーサビリティシステムがコレクターまでの取引しか追跡できない場合、農家向けのインセンティブは、いわゆるJoint Pool Account(JPA) の口座に保管されます。 JPAに保管された資金の使途は、PROJECT TREE参加者(伊藤忠商事、タイヤメーカー、加工会社など)の代表者で構成される運営委員会が決定し、NPO法人プロフォレストの監査を受けます。
※この伊藤忠トレーサビリティシステムは、タイヤの最終購入者の個人情報を収集・取得するものではありません。

トレーサビリティシステムの図

トレーサビリティシステムの
信頼性

トレーサビリティシステムでは、原材料データの *ハッシュのみがブロックチェーンに保存されます。
ハッシュには、原材料の収集者、収集場所などの情報が含まれており、タイヤメーカーや自動車メーカーは ブロックチェーンからこれらの情報を追跡することができます。
また、関係者のみが原材料データへのアクセス制御を有しており、関係のないステークホルダーとは共有されません。 データの改ざんが行われるとハッシュの値は、ブロックチェーンに原材料データを保存されたときと異なる数値が算出されるため、不正を特定することができます。

*ハッシュ:主にデータの偽造や破損のリスクを防ぐために、データを通信する際に取引データを英数字の羅列に暗号化する技術のこと。

アプローチ

アプローチの図

PROJECT TREEのサステナビリティ活動にはProforestが導入した「RSS(小規模農家からの責任ある調達)プログラム」を採用しています。RSSプログラムはサプライチェーンの事業者がそれぞれの供給エリアで小規模農家と協力し、2つのゴール(柱)を達成するのに役立ちます。

柱1:バイヤーの主要な調達方針を満たさない生産のリスクを最小化する
柱2:小規模農家の生活水準や生産方法を改善するための支援を提供する

図1に示す通り、2つの柱の中で様々な課題に向き合います。RSSプログラムの実施においては、2つの柱は別々に取り組むべきものですが、その活動の多くは並行して効果的に実施されます。